2007年09月03日 18:55 ジャンル: [起業者の生きかた] |
高橋淳二 |
まず、努力をすれば大きくなる仕事であること。次に、誰もやってない仕事であること。人から後ろ指を差されない仕事であること。大義名分のある仕事であること。そして、掛売りで苦渋をなめさせられていましたから、前金も取れる仕事であることとし、それらの条件に合う仕事を探しました。
(P.56?57より引用)
セコムを創造した、飯田亮(いいだ・まこと)氏の本。29歳で大学の同窓生・戸田寿一氏と「日本警備保障株式会社」を創業し、以来、現在に至るまでの道のりがわかる本です。書店で偶然手に取ったのですが、とても面白かったので紹介します。
上の引用文は、父の営む酒類問屋から飛び出して何か事業を探している頃に、飯田氏が戸田氏と作った“5カ条”。繁栄すること、永続することとは、こういう柱が大切なのだなということを実感させられます。
「新しく事業を行う際には、セコムが実施するのが最適であるという判断が重要である。もし他の組織が最適な場合は、他の組織で実施するほうが社会にとって有益である」という「セコムの事業と運営の憲法」に則ったのです。
(P.179より引用)
この本の面白い点は、ダイナミックな事業展開が記されている一方で、「どんな時に企業としての転換期がやってくるのか」「どんな時に企業理念に立ち返るべきなのか」といったことが、氏の実例を通して学べることです。
情熱を持ちながらも、冷静であることが大切。飯田氏は、新しい事業を起こすときに、1、2年がかり、あるいは10年という長い視野で考え、“デッサン”を描くそうです。セコムの成長のきっかけとなった「SPアラーム」を売り切りにするか(=短期的な利益)、レンタルにするか(=長期的な利益)で迷った時も、双方のメリット・デメリットを紙に書き出していき、貸借対照表のようなものを作ったそうです。
いま、七十四歳です。もしも八十歳まで仕事をして、あとをのんびり暮らすとすれば、残りは六年ですから、やってもやらなくても大して違わない仕事にしかなりません。
ところが九十歳までなら、あと十六年です。スケールの大きな仕事ができます。何をやるかグランドデザインが必要になり、そうなると発想も違ってくるし、生き方も違ってきます。
(P.212より引用)
「浮利を求めるな」という言葉を父から絶えず教えられたこと、「『進歩的な経営者』という言い方をすればほとんどの人が話を聞いてくれた」というセールストークの成功例、「社会や人が喜ぶことをやろうと思うのであれば、規制なんかに頭をわずらわせることはない。正しいことは必ず通る」という確信など、この本には商売をしていく上での至言が随所に詰まっています。
とくに感動したのは、最後の引用文。76歳の方が放つ“たった”6年なんかじゃ何もできないという言葉。これは深く考えさせられるひと言でした……。自分自身のパワーがちょっと低下気味かもと感じた時に、特に読んでもらいたい1冊です。
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