2007年04月20日 12:53 ジャンル: [ライフスタイル論] |
高橋淳二 |
なぜ、『モナ・リザ』をずっと見つめていても、いつまでたっても飽きないのでしょうか。
それは、われわれの不安をかき立てるからではないでしょうか。
(P.13より引用)
サブタイトルに「ダ・ヴィンチに学ぶ『総合力』の秘訣」とあるように、レオナルド・ダ・ヴィンチに関する謎への問いかけで、冒頭から本書の世界へと引き込まれます。『モナ・リザ』とはだれか? 人はなぜこれほどまでに『モナ・リザ』に惹かれるのか? そして著者は「天才性というのは、生命原理そのものだ」と述べていきます。
さらに読み進めていくと、レオナルドと、彼の生きた時代について書かれています。大航海時代の幕開け、ルネサンスの盛期。「母はアラブ人だったのではないか?」という出自説、結婚していない結婚外子であったがゆえに高等教育を受けていなかったことなども語られていきます。
…(前略)私はかねてより、創造性は「過去の体験×意欲」という掛け算であらわすことができる、と主張しています。
(P.110より引用)
自分のアイデンティティへの深い懐疑が、レオナルドの芸術的創造性の根幹にあるのではないか、と著書の茂木氏は述べています。天才とは型破りで、欠落を内在し、でこぼこである。レオナルドを「万能の天才」という美辞麗句で括ってしまうと見えてこない、むしろそのでこぼこ=個性を見ることでレオナルドの本質に迫れるのではないか、と。
茂木氏は、レオナルドは何よりも「画家」であった、あくまでも平面の人で、立体的なものに対する感覚や能力が、あまり高くなかったのかもしれない、とも述べています。だが、生命の奥行きを感じさせる絵と、生命を即物的に捉える絵を描ける「ふたつの目」を持っていた。その「ふたつの目」が、我々に大変深い謎かけをしてくるのだ――と。
インターネットのことを、掲示板やニュースを見てダラダラ過ごすためのツールだと誤解している人が多いようですが、私はインターネットは、史上はじめてあらわれた、学びのための巨大な図書館、学校だと認識しています。現代における「最高学府」は、インターネット上にあるのです。
(P.127より引用)
レオナルドやニーチェは悲喜こもごもな「生」を引き受けたことに素晴らしさがあること、それまで無名であったカントが『純粋理性批判』を書いたのは57歳であったこと、さまざまな悲しい出来事を人間性の肯定に転換するモーツアルトの「ホワイトマジック」…。本書の後半では、レオナルドやその他の天才を通して、我々はどんなことに気づき、実行すべきかを考えさせられます。
レオナルドは過去ではなく、「未来」だと思う――と語る、茂木氏の言葉が非常に印象的な1冊。140ページとコンパクト、しかもレオナルドのさまざまな絵画がたくさん掲載されているので、非常に読みやすい。けれども、「学ぶとは何か?」ということの答え、ヒント、問いかけが随所にあり、とても刺激を受ける本です。
みなさんのご意見、印象に残ったフレーズなどをお寄せ下さい。
この記事へのコメント一覧です:
名前忘れてたw
(´ー`)y-~~ (2007年04月22日 22:27)
>いつもコメントありがとうございます!
>3番目の引用にしようか迷ったフレーズとして「大学の唯一の存在意義は、人に出会えることです」といった内容のものがありました。何事も、どう活用するかが問われている時代なのですね。
高橋淳二 (2007年04月23日 00:01)
それもまた捨てがたいコトバですね・・・まったくもって同感です。
(´ー`)y-~~ (2007年04月23日 00:10)
(´ー`)y-~~ さん、でも物理的に本当にデジタルデバイドが存在することもお忘れなく。そこを何とかしていくのが社会の使命のはずなのですが、どうも最近はそういったものを社会の保障で補うという姿勢が少なくなっているような気がします。なんでも民営化、自治体任せというのもいかがなものかと・・・。
あとインターネットは巨大な図書館ですが、査閲がないですよね。
つまり最近ユーチューブなどで話題になった日本のある地方伝統のイルカ漁の映像が流れ、「日本人はこんなに残虐なんだ」と宣伝し、第二次世界大戦に結びつけて「やっぱりひどい国民だ」とキャンペーンされたり・・・。こんな時代こそ「倫理」「思想」が大事なのかと思う今日この頃です。
AMITAKO (2007年04月23日 13:31)
>AMITAKO さん、コメントありがとうございます。
>>こんな時代こそ「倫理」「思想」が大事なのかと思う今日この頃です。
>そうですね、たしかに…。どういう情報を取捨選択していくかが、今後大事になってきますね。ちなみに茂木氏は、引用文のあとで「世界の超一流の論文や研究発表がオープンになっているので、それを瞬時に閲覧できるということのすごさ・素晴らしさ」を述べていました。
高橋淳二 (2007年04月23日 14:14)
そうですね,21世紀は「倫理」の時代です。
(´ー`)y-~~ (2007年04月23日 20:12)
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3つめの引用は素晴らしいですね?。デジタルデバイドという言葉は,もはやIT活用者か否かではなく,活用者内部の領域を分割するものとして使われるべきでしょう。
匿名 (2007年04月22日 22:26)