2007年03月20日 00:30

ジャンル: [ビジネスハウツー

高橋淳二

ヒット率99%の超理論(五味一男 著)

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出版社:PHP研究所

定価:1,200円+税

発行日:2007年2月

その理論とは、 「自分がやりたいことを優先させるのではなく、人びとが潜在的かつ普遍的に求めているものを、彼らの代弁者となり見つけ出し、提供する」というものです。

(P.16より引用)

『クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!』『マジカル頭脳パワー!!』『投稿!特ホウ王国』『速報!歌の大辞テン!!』そして『エンタの神様』…手がけた番組のほとんどが視聴率20%以上(=視聴者1000万人以上)をたたき出す――日本テレビ・プロデューサー、五味一男氏の著作です。

第1章と第2章に分かれていて、第1章は考え方が理解できる「五味理論」、第2章はその考え方をもとに問題を解いていく「五味式トレーニング」の章立てになっています。第1章で語られているのは、本の冒頭でも語られているように「1000万人以上に支持される新しい商品やサービス」を生むための理論です。自分は別に天才ではない、むしろ凡人。しかし、運だけでこの結果を出すことはできない、と著者は述べます。

私は「自分の頭の中に、1000万人以上の人びとが持っている普遍的な感情をイメージする」ことで、それを可能にしています。

(P.29より引用)

メガヒットとなるか、ならないか。その分岐点は「企画の出発点」を「自分の個人的な思い(自我)」に置くのか、「消費者のニーズ」に置くのかの違いにあると著者は語ります。もちろん、自分のやりたいことを番組にしても、メガヒットになることはあるだろう。けれども、それではメガヒットを連発することはできない……と述べ、「敢えて断言するなら、つくり手の思いが込められていることと、商品のヒットの間には、ほとんど関係がありません」とまで著者は言い切ります。

このように「作ってみなければわからない、やってみなければわからない」という、クリエイティブに対する“イチバチ”の考え方を否定する話が展開されていきます。それは、五味氏も述べているように「ヒットの確率を上げることにこだわるということに対して、腹を括る、覚悟を決めることなのだ」ということでもあります。

たいせつなのは、いざつくり手となったときに自分のエゴをいったん捨て、プロに徹し、一人でも多くの人びとが望むものをつくろうとする「やさしさ」と「思いやり」を優先させることができるかどうかです。

(P.47より引用)

では、従来のマーケティング手法でヒットを生み出すことができるのか、というとそうではありません。「今何が流行っているか」「なぜこの商品が売れているのか」を分析する“後付けマーケティング”だけでは不十分。「こんなものがあったらいいな」という気持ちを大衆よりも先に探り当てる“先取りマーケティング”こそが大事なのだと著者は述べます。サイレント・マジョリティーから「ありそうでなかったもの」を丹念に見つけ出すには、自分をいかに客観的に見られるか、が重要である、と。

そして、第2章では「例題1/次のうち、日本人のなかで『知名度がもっとも高い』と考えられる人は誰でしょう? 1.KAT-TUN 2.長嶋茂雄 3.上沼恵美子 4.松嶋菜々子」「問題/1000万人の『窮屈』を解消する新しいサービスを考えなさい」といったような問題があり、それに対して五味氏の分析と解答例が掲載されています。

他との差別化を図ろうと考え出すとニッチなところにばかり思いが行きがちですが、「1000万人」という単位で物事を考えるという視点を持ち合わせることで閉塞感から開放され、視界が開けるような気がします(それは「普通の人間」を注意深く見つめなおすという、非常に高度な作業でもあるわけですが)。とても面白い1冊だと思います。

Comments

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この記事へのコメント一覧です:

めっちゃ面白そう♪

12thくろ (2007年05月16日 01:08)

五味さんの展開する理論、「自分がやりたいことを優先させるのではなく、人びとが潜在的かつ普遍的に求めているものを、彼らの代弁者となり見つけ出し、提供する」、思わず頷いてしまいますね。
とかく企画を考える時、自分の興味や知っていることから発想し、
引っ張られがちですよね。自分発想も一部有効ですが、軸足は「(想定される)お客様」に置くことが大切な気がします。ヒット作を生み出す秘訣は、構えすぎず、ただ肝っ玉・腹の据わりが肝要な気がしました。

hedge (2007年08月06日 13:56)

hedgeさん、いつもコメントありがとうございます。

>>軸足は「(想定される)お客様」に置くことが大切な気がします。

まさにおっしゃるとおりですね!

最近、自分が相手を不快にさせたり、逆に自分が「そんなふうに言われなくても…」と思う会話というのは、得てして「自分が気持ちよくなるために発している言葉」のように思うことがあり…、自分が恍惚感に浸っているとき(相手にびしっと言うこと言ってみた、というようなケース)ほど、相手の心に大きな感情を植えつけるものなんじゃないか、と感じています。同じ方向をむいて一緒に恍惚感に浸れる場合は別なのですが、違う立場で向き合って「解決策」を見出さなければいけない場合は特に…。

とりとめのない文章で恐縮です。1つ1つの会話の積み重ねが日々の仕事につながっているんだなあ、と思いながらもっと自分も成長しなければと思う毎日でございます。

こうして書き込みしていただけることにいつも感謝しています。今後ともよろしくお願いします。

高橋淳二 (2007年08月08日 23:27)

Trackbuck

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